誰も幸せにしない過干渉

日本に一時帰国すると91歳になる一人暮らしの母が待ち受けています。普段は週に2回体操、1回マッサージ、1回は麻雀、そしてほぼ毎日、色々な方と食事やお茶に出かけます。夜は固定電話と携帯電話が次から次に鳴り、忙しい毎日を過ごしています。

しかし、私が帰ると、色々な予定をキャンセルし待っていてくれます。そして、色々と世話を焼き、あれをなさい、これを飲みなさい。〇〇に食事に行きましょう。そして、シンガポールに戻る頃、「あんた太ったんじゃない。食べ過ぎはダメよ!」となります。

息子としては有り難いとは思うものの、閉口するばかりです。愛情というより、自分の存在価値の押し売りです。息の詰まる苦しい思いをしてしまいます。その苦しさは過干渉からくる行動の制限だけではなく、思考を奪われてしまうからなのです。

過干渉は子どもの思考を奪います。その結果、子どもは何もできなくなっていきます。思考力をなくす→何も決められない→何も出来ない→依存度が高くなる→心が不安定→わがまま、引きこもり、家庭内暴力、非行となるのでしょう。

何も出来ないのに、承認欲求ばかり強くなり、それが満たされないと全てを他人の責任にしてしまうのです。こんな状態になると周りはとても困りますが、一番辛く悲しいのは本人自身です。

親としてきちんと理解しておかなければいけないことは「過干渉は親の子供に対する依存であり、子供を犠牲にして自分の満足を得ているのだ(親のエゴ)」と言う事です。過干渉は全て子どもの為になっていると勘違いし、傍若無人に領域を犯し、結果として子どもから思考力を奪い、不幸にしてしまいます。

親が子どもにしてあげる最大の目的は自立させる事です。そのためには、親がきちんと襟を正す必要があります。「子どもは親の言った様にはならず、やった様になる」からです。いつの間にか世話を焼きすぎて、文句ばかり言っていませんか?

親が努力する点は2つだけです。「過干渉をしない」「楽しく生きる」です。この二つの点だけは意識して努力しなければできる様にはなりません。

その親の姿を見て子どもは真似をします。そうすれば、明るく楽しく精一杯の自立ができます。

2023年5月25日
園長 峯村敏弘