エグゼクティブファンクション[2]- 自分なりの価値観を作る」

私たちが幸せに生きるためには、自分なりの価値観を持つことが重要です。

あるミュージシャンはラジオから流れてくる楽曲に感動し、音楽の世界にのめり込んだそうです。時には劇的な瞬間によって価値観が形成されることもあります。しかし、多くの場合は、積み重ねた経験、特に失敗や辛い経験を通じて、自問自答を繰り返しながら、自分なりの価値観が築かれていきます。

私自身も若い頃から、自分自身の価値観を見つけるために、たくさんのことに挑戦してきました。これこそ価値のあるものと思って夢中になることが何度もありましたが、時間が経つにつれて飽きてしまったり、思いとは違うことに気づいたりして、茫然自失することが度々ありました。しかし、深く検証せずに運が悪かったと片付けて、また次の夢中になれるものへと移っていきました。

そんな失敗続きの中、ある人から骨董品の鑑定士になる修行方法を聞きました。それによると、多くの知識はもちろん必要ですが、本物か偽物かを見分けるためには、若い頃から常に多くの本物に見て触れる体験をすることが重要だと言われました。本物と偽物の比較を経験するのではなく、一流品だけに触れていくことが大切なのです。本物の中に囲まれていると、偽物が入ってきた時に違和感を感じるようになるそうです。

知識は非常に大切ですが、それ以上に大切なのは、知識を得るために多くの本を読んだり、意見を聞いたり、触ったり、臭ったりする経験そのものが自分の価値判断を形成していくのです。初めは拙い可否判断だとしても、経験を積み上げることによってさらに精度の高い価値判断ができるようになります。

幼稚園における子どもたちの教育においても、毎日の豊かな園生活が大切です。これは、心の豊かさのために、時間や先生方の愛情が必要です。そして、豊かで上質な経験が重要なのです。臭って触って、できればかじって、遊んでみて、その豊かに五感を使った経験から自分なりの価値観が生まれ、失敗と後悔を繰り返しながら、心から満足いく価値観へと成長していくのです。そして、その価値観は、子どもたちがさまざまな困難を乗り越えるための強い武器となるのです。「大丈夫、それで良いんだよ」やりたい事を精一杯応援したいと思います。

2024年7月24日
園長 峯村敏弘